富山合宿 前編

 こんにちは! Team浪漫ものづくり部門長の吉原です。この海外ラリープロジェクトは東京大学とホンダテクニカルカレッジ関東が手を組んで旧車をレストアし、海外のラリーで走らせるというプロジェクトです。ものづくりに触れる授業ということになっているので東大生も車を触り、ホンダ学園がレストアした車をロールケージやラリーコンピューターのついたラリーカーへと改造します。

 しかし東大生は(というより普通の大学生は)車などいじったことがありません。そこでネッツトヨタ富山様の協力のもと車の整備を学ぶべく富山で整備合宿を実施しました。以前のプロジェクトでレストアされて去年のモンテカルロヒストリックなど数々のラリーに投入されてきたTE37レビンを題材に8月1日から8月10日まで10日間で整備を一から学びます。 長くなりますがその時の様子をここに書きたいと思います。また、富山の魅力もお届けします。

1日目

 前日の31日の夜に東大の本郷に集合し8月1日の朝に富山に着くように3台の車で出発しました。時間には余裕があったため朝8時ごろにはトラブルなく整備合宿を行うネッツトヨタ富山GR Garageに到着しました。ここの研修室の二階に10日間みんなで布団を敷いて泊まります。この日の整備は9時半から行われました。灯火類のチェックや室内のチェックなど、午前中は基本中の基本である走行前の車のチェックを学びました。午後にはジャッキアップの仕方、タイヤのガタの見方や車の構造などを学び、車に関しては初心者である我々には新鮮なことでした。

 また、昼にはネッツトヨタ富山の笹山社長にお寿司をご馳走になりました。日本海で取れた富山の魚は大変美味でした。一人暮らしの人も多いので寿司を食べられる機会はなかなかありません。日本海の幸も北陸地方の名物の一つなので富山にいる間にあと一回は寿司食べたいですね。

トヨタスポーツ800
カワイイ
チェイサー
後ろの板ハネがカッコイイですね

GR Garage で展示されていたトヨタスポーツ 800 とチェイサー


2日目

 昨日タイヤのガタをチェックした時に前輪にガタがあることがわかったので整備合宿2日目の午前中は前輪の分解整備をしました。前輪のプリロードが緩んでしまったためガタが出たのだと思われます。せっかくなのでグリスと消耗していたワッシャーも新しい物に交換しました。


 午後は欧州の塩化カルシウムと長時間の船旅によってすっかり錆びてしまった下回り
とブレーキキャリパーをワイヤブラシでガリガリ削り、シャシーブラックで塗装しまし
た。地味な作業も人数がいるとすぐに終わってよいですね。

フクラギの海鮮丼

夜に食べたフクラギの海鮮丼。初めて食べましたがブリの幼魚だそうです。 身がしまっていて美味でした。

3日目

 次の日にはトヨタ GAZOO レーシング チャレンジ高岡万葉が行われ、この日はその準備があるためレビンの整備は午前中のみとなりました。明日は高岡万葉でレビンの展示をするため大きな整備はできません。この日はこの車のエンジンの掛け方を習いました。当プロジェクトが海外のラリーに投入する車両は全てキャブ車です。チョークの存在は知っていましたが実際に使うのは初めてでした。チョークを引いてアクセルを一回だけ踏み、アクセルを少しだけ煽りながらセルを回します。エンジンがかかったらアクセルを少しだけ踏んで 1800 回転にして時間をおいてエンジンがあったまったらチョークを段階的に元の位置に戻します。ラリー本番は冬なのでエンジンをかけるのも大変そうですね。
午後は私たちに車のことを教えてくれていた安達さんが TGRC の準備に行ってしまったため学生の自習ということになりました。学生たちは 2 つに分かれて、1 つはラリーコンピューターの設計のための勉強会を、もう 1 つは学生たちが乗ってきた東大の公用車のファンベルトの交換を行いました。先日よりファンベルトが鳴いており、ボンネットを開けてみるとベルトが裂けているのが見えました。良い機会なのでこの場で修理してしまおうと言うことになり、スズキのパレットのベルト交換を行いました。パレットな軽自動車ですのでエンジンルームが小さく、各所のボルトへのアクセスが鬼の様に悪かったですがネッツさんのお力(パワー)も借りてなんとか交換することができました。この経験はいつか古い車にも生かされるでしょう。我々も鍛えなければなりません。

 夜には富山の氷見市の名物である氷見うどんを使ったモツ煮込みうどんを食べました。目の前でグツグツと煮込まれ沸騰した状態で提供されたうどんは最後まで冷めることなく、柔らかめのうどんは味噌ベースの汁とよく合いました。モツはたくさん乗っていて自分は麺を先に食べてしまいモツを余らせてしまうくらいでした。大変美味しかったです。

4日目

 この日はTOYOTA GAZOO Racing Charange が高岡万葉で開催されて我らがチーム浪漫はその会場で展示をすることになっていました。朝6時に富山市を出発し、ちょっと遠回りして朝の日本海とそこに停留している帆船海王丸を見てから会場に向かいました。現地では会場に入ってすぐの場所を用意していただき、展示を見てくれた人達に私たちの活動と目標を伝えて募金活動を行いました。学生は7人おりましたので簡単なシフトを組んで仕事がない人達は会場で開催されていたラリードライバーの同乗走行やSUV同乗、ラリーのSS観戦など各自イベントを十分に楽しみました。特にラリーカーの同乗体験はほとんどの学生にとって車のスポーツ走行に触れる初めて機会で車の凄さや面白さに感動しました。SSの観戦でもアルテッツァやスターレット、ランクスなどの珍しい車がダートを走っていく姿に大変興奮しました。

 この日、自分は初めてレビンを運転しましたがとても力強い車という印象でした。1600ccからボアアップされて1750ccになったエンジンは低回転からトルクがあり、構造が単純で電子制御などないのでレスポンスが素晴らしく良いです。1速がとても短くパワーが出るので自分以外にも何人か運転しましたが久しぶりのマニュアル車で誰もエンストを起こしませんでした。スコスコと入るミッションのシフトフィールは気持ちのいいものでした。

 この日の夜は富山駅の近くに車を止め、富山駅の中に入っているお店のエビ天丼を食べにきました。私は初めて知ったのですが小さい白エビは富山の名物らしく、たくさんの小エビのかき揚げに甘ダレがかけられた天丼は絶品でした。

 5日目

 この日はお世話になっているネッツトヨタ富山さんがお休みのため、学生は自由日となっていました。ですが工学部の学生の多い当プロジェクトのメンバーは富山のBBSジャパン様の工場見学をさせていただくことになっており、前日に展示していたレビンと人数の乗るグランディスで朝から再度高岡市に向かいます。BBSジャパン様の工場では、まず最初にお作りされているホイールの説明と会社の概要を聞き、その後工場にてホイールの鍛造の様子を間近で見せていただきました。アルミの塊だったものが1つ1つ何千トンものプレス機によって何回も圧力をかけられることによって精巧な形が作られていく様子は見ていて圧巻の一言でした。最後に当プロジェクトの説明を行ったところ、BBSジャパン様よりご支援を頂けることになりました。BBSジャパン様、工場の見学に加えご支援もいただき大変ありがとうございました。

 お昼頃に工場の見学は終わり、せっかくなので高岡から金沢の方まで抜けてしまおうということになりました。金沢まではバイパスが通っており1時間くらいで金沢に着きました。まずは腹ごしらえです。金沢といえば金沢カレーですが、せっかくなので東京ではあまり見かけないものを食べたいということで、金沢ではB級グルメのハントンライスをいただきました。ハンガリーの「ハン」、フランス語でマグロを意味する「トン」でハントンライスだそうです。オムライスの上にマグロのフライとエビフライが乗っており、そこにケチャップとタルタルソースがかけられていて結構ボリュームがありました。オムライスにタルタルというのも合うものですね。

 お腹が満たされたら金沢の観光名所、日本三名園の一つである兼六園に向かいます。非常によく手入れをされた木々と水との風景は素晴らしいものでした。その日は猛暑日で歩いているだけで汗が滝のように流れましたが、木陰のベンチで風を感じながら閑静な風景の中で休憩したのは心地がよかったです。

 兼六園の観光が終わってからまだ元気なレビン組はグランディス組と別れ、富山の世界遺産である相倉合掌造り集落に向かいました。先ほども述べたようにその日は猛暑日でしたが山の方は涼しくてエアコンのないレビンでも快適でした。合掌造りを見るのは相倉が初めてでしたが現在でも古くからのつくりの住居が形を残しているのは感慨深く、山と棚田に囲まれた集落は風情がありました。

 相倉合掌造り集落のある五箇山の周りはいい感じのワインディングの道路で、帰りは庄川に沿った道を使って富山市に向かいます。中速コーナーの連続した道で、800kg代の車重とボアアップされた1750ccの2T-Gエンジン、機械式LSDが揃ったレビンでの運転は50年近く前の車がこんなにも楽しいのかと感動しました。そもそも旧車でドライブできる機会もそうそうありません。とても良い経験になりました。

後編へ続く……